レセプトのスキルを高めて長く働きたい…ニーズの高い経験・資格は? ――病院事務職キャリア相談室

レセプトのスキルを高めて長く働きたい…ニーズの高い経験・資格は?

医療事務 Kさん

20代後半、女性、医療事務歴5年


現在、個人クリニック(一般内科)で受付からレセプト業務まで全て含めた医療事務を担当しています。現時点で管理職になりたいという希望は持っておらず、今後様々なライフイベントがあっても、医療事務として長く働いていけたら良いなと思っています。

長く必要とされるためにさらなるスキルを身につけたく、病院あるいは診療科の違うクリニックへの転職を検討中です。転職先ではレセプト業務を強みとして伸ばしていきたいと考えていますが、たとえば多くの診療科を経験した方が良いのか、入院レセプトをできるようになった方が良いのかなど悩んでいます。
また、強みをつくるために、資格の取得を目指すことも検討中です。しかし、数多くの認定資格があり、どれが医療機関で重宝されるのか、判断がつきません。

長く医療事務を続けるにあたり、重宝される資格や経験があればぜひ教えてほしいです。

【回答者】雪竹舞子(事務職専門コンサルタント)

ご質問ありがとうございます。「管理職を目指すのではなく、ライフステージが変わっても働き続けたい」というKさんのお気持ちをふまえて、お答えさせていただきます。

まず、Kさんはクリニックで5年も医療事務を経験されていますので、外来レセプト業務に関しては経験者として申し分のないスキルをお持ちと思います。外来の医療事務の求人では、診療科は問わないことが多く、希望要件として「同じ診療科の経験者だと尚良い」と言われることがある程度、という印象です。ですから、外来担当の即戦力としてクリニックや病院へ転職することは十分可能でしょう。

以上を考慮して、強みをつくるためには転職先でどんな経験を積むべきか、考えてみましょう。Kさんはキャリアアップではなくスキルアップを目指されているとのことですから、病院への転職をご検討されてみてはいかがでしょうか。というのも、今までお預かりした求人をふまえると、やはり入院レセプト業務の経験者のニーズが圧倒的に高いからです。Kさんの場合、外来レセプト業務の経験を足がかりに、入院レセプト業務にもチャレンジされるのが良いのではないかと思います。ただし、入院レセプトと一口に言っても、病院の施設形態(急性期、ケアミックス、慢性期、DPC対象の有無)によって難易度は異なります。スキル重視であれば、急性期病院にて出来高算定もしくはDPCのレセプト経験を積むことが望ましいでしょう。

また、在宅のレセプト業務スキルを身につけるというのも一つの手です。今後の医療政策においては「在宅医療」がキーワードになっており、弊社でお預かりしている案件も「在宅医療の経験者」を求める求人が年々増加傾向にあります。将来的にニーズの拡大が見込める分野ですから、いまのうちにスキルを身につけ、クリニックで長期キャリアを築くという道もあると思います。在宅医療のレセプトでは介護レセプトの知識も必要になりますが、Kさんは既に医療レセプトの知識はお持ちですので、入職後に学びながらスキルを身につけていくという働き方も可能でしょう。

次に、資格についてお答えします。レセプト業務経験者の転職において、医療事務のスキルに関する資格で特に優遇されているものはありません。選考では認定資格よりも現場での業務内容や、月間の処理枚数といった経験が重要視されます。たとえば紙カルテなのか電子カルテなのか、何枚のレセプトを何人で点検しているのか、総括や査定返礼の対応は行っているのかなど、これまでのご自身の業務を整理しアピールできると効果的です。

医療事務としてのスキルアップとは少し話が変わりますが、業務の幅を広げるという意味では、医師事務作業補助者に関するものや診療情報管理士などの資格を取得するという選択肢もあるでしょう。いずれも病院の施設基準に含まれる資格のため、欠員が発生した場合に求人が出やすいポストではあります。実際に、医療事務経験者がそうした資格をとって活躍されているケースも。ただし、医療事務とは担当する業務が異なるため、Kさんがご興味を持たれたタイミングでご検討いただくのがいいかもしれません。

今回はスキル面にフォーカスしてお話しましたが、長く働き続けるには通勤時間や残業時間、休日の日数、福利厚生なども重要になってくるかと思います。転職活動の際は視野を広く持って、実際に求人を見比べていただくと良いでしょう。はじめての転職では不安や疑問も多いと思いますので、なにかあればまたご質問いただけたら幸いです。

まとめ

  • (1)医事課系職員の転職では入院レセプトのスキルがニーズが高い

  • (2)将来的なニーズを見越して、在宅医療のレセプトスキルを身につけるという選択肢もある

  • (3)転職では資格の有無よりも実績や業務処理能力を明示すると効果的


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雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)

エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ。

大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。

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