事務次長の経験・スキルあり、面接通らないのはなぜ? ――病院事務職キャリア相談室

事務次長の経験・スキルあり、面接通らないのはなぜ?

事務次長 Mさん

50代前半、男性、病院事務職歴22年


大学卒業後、一般企業を経て医療機関に入職しました。数回転職をしていますが、ずっと病院の事務管理職を担ってきました。現在の職場環境に小さな不満は多々ありますが、耐えられないほどではありません。ただ、現職では組織構造上、事務次長から上を目指すことが難しそうです。この先、現在の年収で定年まで働くことは正直避けたく思っています。

より良い条件で採用していただけるところがあればと、インターネット上の求人サイトやハローワークを通じ転職活動を1年以上も続けておりますが、なかなか結果につながりません。書類選考で落ちることもありますし、面接まで進んでも最終的に色よいお返事をいただけていないのが現状です。

求人票の職種や応募条件、業務内容を見る限り、自分の経験やスキルが求人側のニーズと乖離している印象はないのですが、なぜかうまくいきません。年齢的な問題でしょうか? 原因がわからないため改善のしようがなく、困っています。どんな理由が考えられるか、教えていただけますと幸いです。

【回答者】雪竹舞子(事務職専門コンサルタント)

ご質問ありがとうございます。ご転職活動がうまくいかない理由について、コンサルタント視点からどう思うか、ということですね。今回はMさんのご転職活動について「転職の必然性」「希望条件」「面接時の留意点」という3つの視点から考えたいと思います。

条件面改善が目的の転職、落とし穴は

まず、転職の必然性について。ご相談内容から推測するに、Mさんは“どうしても転職をしなくてはならない”というよりも、あくまで“良い条件があれば転職したい”とお考えなのでしょう。「現在の職場環境に小さな不満は多々ありますが、耐えられないほどではありません」とのことなので、退職せざるをえない事情や、致命的な不満・不信感があるわけではないのでは、という印象を受けました。

退職理由について、求人側が納得のいく説明をできるかどうか、は転職活動をする上で大きなポイントです。たとえば転居・結婚・出産・育児・介護といった家庭の都合や、人員整理・売却・買収・閉院といった病院・法人都合による退職など、必然性のある退職・転職であれば納得感が得られやすいです。一方で、待遇面や業務量など、条件面のみが理由となると、求人側としては「うちより良い条件の医療機関を見つけたらまたやめてしまうのでは」「責任感を持って業務を担当してもらえるのだろうか」といった不安がぬぐえません。必然性が感じられにくい転職理由の場合には、後述の「面接時の留意点」の中で触れているように、志望動機についてしっかりご用意いただく必要があるでしょう。

次に、希望条件について考えてみます。Mさんは「より良い条件」を求めているとのことですから、年収アップや休日の増加を目指していらっしゃるのでしょう。しかし、ご希望の条件を満たす求人は、残念ながらあまり多くはありません。Mさんは20年以上のご経験をお持ちで事務次長という役職にもついていらっしゃるので、恐らく現年収は700万円前後ではないでしょうか。この年収を担保もしくは上回る条件の求人自体が、少ないように思います。

高額の年俸や月収を提示する求人もありますが、水準以上の好条件にはそれなりの理由を抱えているケースが少なくありません。たとえば「赤字解消をお願いしたい」「新病院の立ち上げから運営までを任せたい」「引き継ぎのできない急な欠員の募集」など、入職後に大きな働きを求められることも(もちろん、全ての求人に当てはまるわけではありません)。年収や業務時間といった個々の条件にフォーカスしすぎると、最終的に自分の求める働き方ができなくなってしまう可能性もありますから、「総合的に現職と比較した結果どうなのか?」という視点でお考えいただいた方が良いかと思います。判断基準として、叶えたい条件の優先順位も確認しておきたいところですね。

意外なところを見られている? 面接時のポイント

最後に、面接時の留意点についてお伝えしたいと思います。面接では、志望動機や意欲も大きな評価ポイントです。しかし前述した通り、条件や待遇のみで求人を探してしまうと、「志望動機」が医療機関にとっては納得しにくいものになりがちです。納得感のある志望動機を伝えるには、まず法人のホームページや施設基準などを確認いただき、その法人の特徴や地域での役割、理事長・院長のお考えなどを理解することが必要です。その上で、ご自身の経験や事情に紐づけた志望理由をお話しいただくと効果的でしょう。

また、話し方にも注意が必要です。Mさんのようにトップに近い立場の方や、採用する側に慣れていらっしゃる方は、面接でもつい、普段通りの口調や物腰が出てしまうことがあります。求人側がそれを「上から目線」「自信過剰」と受け取りマイナス評価につながる恐れもありますから、面接時には謙虚さや丁寧さを心掛けたいですね。面接官である理事長や院長、事務長のお話をしっかり聞き、発言を受け止めた上で積極的に質問したり、ご自身のご経験についてアピールしたりできると好印象につながるでしょう。あとは、自分のことばかり延々と話す、などもマイナスポイントになりがちです。最初に結論や実績を明示し、そこに至った経緯などは簡潔にまとめるよう意識していただくと良いかと思います。

さらに、Mさんはこれまでも転職を何度か経験されているとのことですが、ご転職に至った理由の伝え方には配慮が必要です。転職頻度が高い、または、在籍期間の短い過去勤務先がある場合、医療機関としては「採用してもすぐ離職してしまうのでは」という懸念から、かなり細かく理由を確認されることが多いです。その際、現職や前職についてネガティブなことばかり言ってしまうと心証を害してしまいます。

求職者の方々とお話しすると、「そもそも面接に慣れていない」という方も少なくないようです。面接は相手あってのものですから、ご家族や身近な方に模擬面接をお願いしてフィードバックをいただくか、私のようなコンサルタントにご相談いただくと良いかと思います。実際、そのようなご相談をいただいたときは、面接の雰囲気やよくある質問、効果的なアピール方法などをお伝えしています。電話でのご相談も可能ですのでお気軽にお問い合わせください。

Mさんのご年齢をふまえますと、定年前の最後のご転職となる可能性が高いのではないでしょうか。悔いの残らない事務職人生となりますよう、慎重にご検討・ご準備いただくことをおすすめします。

まとめ

  • 転職理由・志望動機が医療機関から見て納得できる内容になっているかを確認する

  • 現年収以上の条件はそもそも少ないであろうことに留意した上で、譲れる点と譲れない点を整理し総合的に現職と比較する

  • 面接時は謙虚さと丁寧さを忘れず端的な話し方を心がける


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雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)

エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ。

大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。

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